「風の歌が聴こえる。富士山を目の前に、レモンの甘い香りがする。」
雪が舞い降りた翌日。
風は強く、海は荒れています。
寒いなぁ、みんな散歩いけるかなぁ。
なんて僕の心配は露知らず。
「今日もふしぎを探しに歩きにいくー!」
と言っている1年生のT君は半ズボンです。
3年生のT君はパーカー1枚で上着を着ない!
なんだこのやせ我慢感は!
でも、なんか、かっこいいぞ!
俺もダウンなんか脱いでやる!
でも、やめとこ。
年齢を重ねると、無理をすると、すぐに身体にガタがくる。。。
悔しいながらも、健康第一です。
心だけでも、みんなに負けんぞ!と出発です。
今日は、先生の友達も散歩に参加です。
森の力で心身の健康を増進させる「森林セラピスト」として、
全国から引っぱりだこの、なぎさ先生。
さむーい道を歩いている最中、半ズボンのT君が、
「僕の手温かいよ。」
と、なぎさ先生の手を握っている姿にうるると感動。
おい、男の俺にもしてくれよ!!
なんて嫉妬をしながら、肩を組みながら、森の奥へと歩を進めます。
高台から夕陽と富士山を真正面に見ながら、
「気持ちが大きくなる丘」
という名前をつけ、
「夕陽見ると俺切なくなるなぁ、Tさぁ、切なくならん?」
の質問に、
「切なくなるのは先生が悲しみを知っているから」
なんて言うもんだから、僕は寅さんのオープニングを歌いだします。
生徒たちはきょとんとしてます。
そんな矢先、
なぎさ先生が、
一つの葉っぱを持ってきて、くしゃくしゃっと手の中で潰しました。
すると、ほわーん、とレモンの香りが、澄んだ空気中に膨らみます。
うわぁ、またもや、切ないなぁ。
レモンの葉っぱって、レモンの匂いがするんですね!
ってみんなで感動して、
野草の三つ葉をみんなで食べて、
「好きだよむしゃむしゃ」
「うわ、大人の味」
と舌と口と鼻で感じ、道は続きます。
風がごうごうびゅんびゅんと鳴る気のトンネルを抜けると、
ある子は、植物の芯を拾い、
空き家の壁に文字を書き始めました。
「好きな子の名前、書こうよ。」
って言ってみたら、
いつも喧嘩ばかりしている弟の名前を書いたりするもんだから、
また僕は寅さんのオープニングを歌います。
その照れた背中、いいぞ、いいぞ。
道を歩もう。こころをひらこう。
歌をうたいながら。
ぱぁーぱぱぱぱらぱぱぁー
ぱーぱーぱぁーぱーぁぱぱぱらぱぱーん(寅さんのオープニング)