俺の身体の左脇、ぶわっと風が、先に動く。
一波。
土の茶と葉の緑、落ち葉の茶。
とごぉ〜んと音のする山の斜面に立つ俺の左脇から、びよわをーんと音の波が、続いて動く。
二波。
「やせいにぃ、なってる〜〜ぅ〜〜」
という音の振動が、左脇を抜け、「ここみ」の待つてっぺんに抜けていく。
抜ける。
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「おれはぁ〜、やせいにぃ〜、なっている〜るるーる〜」
ザザがガザザザッズズアッザッ
トカゲのように、全身で腹ばいになり、傾斜を土と葉と何かの微生物だらけになり、駈け上がる「せいりん」がいた。
Dance,
Dance,
Dance,
レインボーの文字で描かれた紫のトレーナーは、あぁ擬態なのだと思った。
フレディマーキュリーどころじゃない、
トカゲだった。
「ハッはっ、スッ、ハッ、ふっ、ふふっ、ウフフ、スッ、ハッはっはっ、ハーーー、ううっほういうぇぇあ〜〜〜イイィィァーー」
トカゲのせいりんは、俺の左脇を、
音と風と変な動きの物体としてすり抜けていった。
笑顔と呼吸をリズムにして、振動になって。
ゾクゾクして鳥肌が立った。
手綱にしていた、何かの枝のトゲが刺さった。
トカゲはなにかを歌っていた。
歌がはじまる「予感」がした。
いあですか、みなさん、おかあさん。
「予感」は、心のフィルターの色眼鏡を変えるようなものだ。
「あ、女の子といちゃいちゃしなくちゃ!」
俺の周波数は切り替わった。
目の前の見える世界、山の斜面の上の方では、
左にトカゲが、ダンスダンスダンスを胸に、落ち葉に滑って転がった。
転がった。のが、はじまったところで、その3コマぐらい前の瞬間に、トカゲの歌が、音がはじまっている。
俺の周波数は切り替わって、5コマぐらい少し先を経ち始める。諸行無常。
その右上のてっぺんに、ここみ。
ここは手を出して、
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「ほら、おいでよ、ここまでこないと。痛くないよ、落ちないよぉ。」
「俺、別に、そんな山のこと、好きじゃねぇよ。
歩くのは好きだけど、こんな斜面上がるんはさぁ、、楽しいけど。ここでいいよ、見とるで。トゲとか痛いのいやだし。」
「もう、この出している手を見てごらん!」
「いやぁ、もう、あうあうあうああぁぁ、ボブ、マーリーさんの音が流れはじめる、重力が変わる。
よし、愛だろ、愛。
ザザザバッババーッビ、ビバッザナざさザシャッザァーチチヂッじゅジャヂッッ、
音を立てて俺の左側の木の枝と枝の間を、
あれが、トカゲが、歌を音に、音を歌に変えながら、落ちていく。
宇宙のようなつちと、せいりんの身体の中の60兆個の細胞と、
トカゲのような骨のくねらせ方と、微生物の呼吸と排泄と、
あ、女の子とイチャイチャ、、、
なんだ?せいりん、トカゲ、紫、ダンスダンスダンス、枝、痛、筋、吐く、、
自分なんて、ない。
あるのは、はいて、すう、呼吸のみ。
すべてのつながりのなかでのこきゅうのみ。
産まれてくる時、あそこから出てくる時、
吐いて出てくるか、吸って出てくるか、知っとる?
ザザッザァーざぁーざぁーざざぁーざぁー
「ここまで上がってこんと、手つないであげんでねぇ〜、はやく〜」
待ちきれんふみは、右隣を何度も滑り落ち、
笑い、ハッハッと速い息と共に、上がり、下がり、落ち葉の波打ち際で、音を立てる。
人生はダンスだ。
2本足で立ち、木に背中をもたれ、片足を枝にかけ、下から上を見上げる。
トカゲ、ザ、ダンスは、しびれをきらし、
自分なりの道を切り開き、切り拓いて得たこん棒で、俺にちょっかいを出す。
「それじゃ、やせいてきだ、やせいじゃない。」
いやいや、俺が詩人だ、おまえは、トカゲ、ザ、やせいだ。いやはや。
俺はパーフェクトデュエットを歌い、踊り、2人の女の子に求愛する。
こことふみは、うつくしい。
それぞれの違いとのびやかさが、うつくしい。
「そこは、デビッドボウィでしょう?」
トカゲせいりんが、敬語を使いよかったで、、
「まったく。」
イエス、ユー。
母ちゃんには、「まったく」って言われ続ける、冒険家でおれよ、トカゲ。
ん?きづけば、らいとや、なんとかたろうや、
りょうたという名のなにかや、
ひと?ひとろみたいな、名前のオスや、
土田というまったくもって、生真面目で愛という音の似合う細胞の塊、、
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にかこまれとる。
この距離のとりかたは、マジで楽しんどる、それぞれの証だ。
ここがしびれをきらし、滑り落ち、手を出してくる。
「まったく、もう。」
ボブのリデンプションソングを歌う手を、
ここがグッ、ザッ、ひだりて、みぎあし、グッググッ、ザザザッ、
風が動いて、重力が動いて、
ここのひだりてをみぎあしでおぎなって、
俺のひだりてをみぎあしでおぎなって、
ここのひだりてで、俺のみぎあしをおぎなって、、
おぎなって、うめあわせて、ぐるぐるめぐって、
ダンスダンスダンス
おっ、おちるぞ、、
だいじょうぶ、おちないよ、おちるわけないじゃん、
おい、おちるって、ここ、おちてきとるって、、
あ、ふみふみふみふみ、、、
デート!
「はーい、この上までいったらてっぺんだよ、はやくー、デートしてあげないからねー、ここまで、あがってこんと、もーう」
まったく、もう。
音が、風が先に、、、
てが、わたしが先に、、、
手をみてごらん?
みえてる?
それ、なに?
私の手、わたしのて、
わたしって?
せんせいってなに?
よしあきってなに?
このてはなに?
どこ?だれ?なに?
ナニナニ?
スッススッ、ハッスッはっはっ、あ、アアアァウアァァァーヒューヒュー、
デビッドボウィ〜〜、ヒィィィエイエイエヒィーヒィーイーィーィー!!
トカゲの音が、落ちていく、俺の左側の枝と枝の間みたいな、いのちのかたまりの連なりのような、
縁起、
みたいな、
イチャイチャ、、、
「ここまで上がってこないと、デートしてあげないからね!」
右上から音がする。
ふみが、音が、する。
「まるで、人生じゃねぇか。」
衝動が、
言葉や、その少し前の、思い、になる前の衝動が、突き上げてくる。
あいかわらず、俺みたいななにか?の左脇らしき肉の塊の隣を、ダ・セイリ・ンスが、落ち葉と滑り落ちる。
その先の、いや、その奥の、この底の底の、
人類が、この今の一瞬を積み重ね、数千年、かけて、
いのちがなん億光年を旅して、今にいたる、
その果てしなく大きく、果てしなく小さな、
この一瞬に、わきあがる衝動にみをまかせる。
衝動
わたしのところまで上がってこないと、、、
わたし?
あがる?
おちる?
なに?
じぶん?
なに?
トカゲ?
なに?
もっと右上にふみ
まうえ?て?のさき?
て?だれ?俺?ここ?
どっち?なに?どっちって、なに?
おと、かぜ、とおりながら、
つながりながら、
なに?
が、溶けていく。
トカゲダンスが、ここが、おれが、
ふみの、「デート」って単語が、定義が、意味が、
周りを囲むいのちたちの分子と原子が、名前が、オスがメスが、
あれ?ゲルで踊って狂った仲間が、
なかま?いのち?
うん、いのちが、敬意をはらって、
けいい?はらう?
ああ、うるせぇなぁ、脳内、うるせえなぁ、
これはおれの手でもあって、ここの手でもあって、ふみの手でもあって、せいりんの手でもあって、だれのものでもなく、だれのものでもある。
微生物も、俺も、詩も、ことばも、
トカゲも、紫も、先に動く風も、振動も、月も、においも、冥王星も、周波数も、、
衝動、
おんなのこ?いちゃいちゃ?
いのちのせんさいのわれめになると、
葉の音1つ、
落ち葉を踏む足の先のいのちのれきしのうちゅうが、コスモスが膨張する。
チリッ
パポリッ
ダンスダンスダンスが、左腕をガッとダンスした。
引っ張った。
カッコつけながら、かっこつけん、鎧をほどいて、解放して、でも、かっこよくおりたい、かっこつけん、で、女の子とイチャイチャしとりたい。
愛するあの子とイタタ、いちゃイャしとり、痛い!
そんなんひっぱったらぁ、ぁぁぁあ、
なんだ?この、、先に風が動く、、感じ。
さいきん、
あなた、わたし、
さきにかぜがうごくかんじ、かんじた?
におい、痛覚、吐いて、吸う。はいて、すう、のみ。
かっこつけとる?
詩人だもんでさ。
はてしなく、瞬間は蠢く。うごめく。
春の虫の虫と置いて、うごめく。
あぁ、愛するあいつと、子どもなしで、2人っきりで、美味しいもん食べて、イチャイチャしたいなぁ、野生的に、いや、やせいに。
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やせいに、ね。
ふみとここは、さかをはしっていった。
かぜがさきにうごいて、ダンスダンスダンス。
ハッ、すっ、ザザザァー
「どこでもない」から「いまこの瞬間」へ。
踊れ。
解き放て。
もっと泥臭く、粋でやさしいバカで。ありたい。
人生はダンスだ。
ハッ、すっ、ザザザァー。
words by よしあきみたいな、なにか。いったい、なにか?